祝! 星雲賞受賞! 新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』

新城カズマサマー/タイム/トラベラー』が星雲賞長編部門を受賞!
めでたい!


中2のころからになるから、もう一回り以上。長いつきあいですが、この人以上にワクワクする(センス・オブ・ワンダーを感じる)作家は、同時代にいません! いません!(2回ゆった

元々はPBM(郵便で行うネットゲーム)の開発者・ゲームマスターで、分類学上はいわゆるライトノベル作家ですが、そーゆー偏見は取っ払って絶対に読むべき。

と、ゆーわけで受賞記念勝手に突発的ブックレビュー!


受賞作はこちら↓

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)
『サマー/タイム/トラベラー』ハヤカワ文庫JA
静かに腐りゆく地方都市を舞台にした、ちょっと頭の良い少年少女が『時間』と格闘する夏の物語です。『世界の云々』とか『タイヨウの云々』とかエモエモしたのが好きな人にはお勧めしない。高校生らしい、裡に秘めた静かな感情のうねりが素晴らしい!





そもそも「ライトノベルって何?」という人に↓

ライトノベル「超」入門 [ソフトバンク新書]
ライトノベル「超」入門ソフトバンク新書
なんと新書(笑) 要するに、ラノベ版『ウェブ進化論』。まったく知らない人に向け、歴史からその意義、現在の位置づけまで茶目っ気と資料たっぷりで書いてます。非常に読みやすい。





軽めに読み始めるなら……ちょっと手に入りにくいのですがデビュー作にして巨大学園モノのこちらを↓

蓬莱学園の初恋! (富士見ファンタジア文庫)
蓬莱学園の初恋!』富士見ファンタジア文庫
スラップスティック巨大学園ヒトメボレ恋愛追跡劇。よくわからん。けど、読み始めたら舞台設定とか抜きに文体のテンポで読み切れます。素晴らしい娯楽小説。最近『マリ見て』とか『笑う大天使(ミカエル)』とか、ルーツである巨大学園モノが復興の兆しを見せているので、これを機に是非! 蓬莱宅園は1話完結シリーズものなので、長く楽しめますよ。





ミステリ読者/ボルヘス読者にはこちらを↓

浪漫探偵・朱月宵三郎 屍天使学院は水没せり (富士見ミステリー文庫)
『浪漫探偵・朱月宵三郎 屍天使学院は水没せり』
              富士見ミステリ文庫

なんだその条件付けは(笑) 本格、というか変格ミステリですが、論理トラップが好きな人に向いてます。「ええええーーー!そんなんアリかよ!(嬉」と叫ぶのが好きなマゾなあなたに。





もっとハードなSFが読みたい!ってマニア、または人文学の“政治性”“誠実さ”について考えたことのあるあなたはこちら↓

星の、バベル (上) (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)
『星の、バベル』ハルキ文庫
南の島の美少女アクション、と思いきや、ハードな空想人文科学小説(Humanity Fiction)。言語と民族の起源を創造する意味。2重の分節化と順列組み合わせという発明がもたらしたもの。温暖化が引き起こす疫学的悲劇=テロル。言語=情報=遺伝子の書き換え。超高次情報生命体……オチが少しアレですが、妄想をたくましくさせる知的刺激に満ちています。



って

あーー。書いてたら全作品解説やりたくなってきた!
イヤ、やりませんが。
もうね、彼の新刊だけを支えに中高を生き抜いてきたといっても過言ではないだけに、思い入れが強すぎるのは自覚してます。


でもね、


それを抜いても、今の日本では屈指の正統派SF作家だと思うわけですよ。
いつも時代の半歩先を行きながら、知的興奮を振りまくハーメルンの笛吹き
92年出版のラノベで「計画的な悪貨の濫造による地域経済の崩壊」とかを書いちゃったり、93年に「音素連関に基づいた人工無能」「ゲーデルエッシャー・バッハ」「中国人の部屋」「囚人のジレンマ」なんかをモチーフに中高生向け小説を、しかも「萌え」も入れ込んで書けた人がいますか!?(修辞疑問)
何度でもしつこくしつこくいいますが、小説好きの人は是非! 一人残らず読んでほしい作家です。



(しかし便利な時代になったモンだ。絶版本も多いのに、ぜんぶアマゾンマケプレで手に入るのな。¥1ってどーゆーことだ、とか思わないでもないけどw)