『晴れたらポップなボクの生活』の感想文とか書くよ。

gnt2006-02-20

基本情報はこちらで確認してくださいな。



 まずは招待してくれた某氏の権力と仕事熱心に感謝を。
 1800円おごってもらったのと同じだもんなー。デカい。
 あと、にもかかわらずその前の飲みおよびスケート疲労かつ踊り疲れ&慢性的寝不足がたたり、舞台あいさつの途中で眠ってしまった件について心からお詫びを。申し訳ない! 矢部が面白かったのは覚えてる。


 さて。そろそろはじめますか。

本編(寝ないで観ましたよ!)のあらすじ。

 野宿者のロードムービー。要するにホームレスの放浪記。以上。
 ……すみません。真面目にやります。

あらすじ。

 葦しげる河川敷(おそらく江東区)に青ビニハウスの集落があって、ヘンな野宿者が10人くらい住んでる。台湾人の板尾とその妻片桐はいり片桐はいりに恋心(!!)を抱く温水(っつって主な行動は覗き)、おかまのキム兄やん、そして息子に引き取られて行く梅津栄。まぁ豪華。

 狂言回しは「カメラマンになりたい」「インドに行きたい」と言ってケータイで写真を撮りまくる若者:矢部太郎。彼は最近野宿者になったばかり(恋人から電話がかかってくる=ケータイが止まっていないことでその描写がなされる)。墜ちるところまで墜ちたモラトリアム式ダメ人間の典型。あり得るかもしれない明日のぼくだ。

 そして主人公は青ビニ村のはずれに住み、常に野球の審判マスクをかぶっていて(1試合500円で草野球の審判をすることで現金収入を得ている)、近隣住民と口も聞かず、ホームレス同士からも「変人」とされている、ピーター扮する「ユウさん」。ある日突然、彼が自宅を破壊しマスクを取って「旅に出る」と言い出したところから物語はロールし始める。矢部は彼を被写体として選択し、何とはなしに旅の同行者を志願する。

 ピーターが旅に出た理由は?
 そして矢部の夢の行方は?

 まぁ、疑問形で終わらせるのは素人紹介文でも下の下になってしまうのでネタバレにならない範囲で答えを言っておくと、
 ピーターの旅の目的は、「過去の清算」。
 そして矢部の夢は叶わない(とりあえずこのフィルムの尺の中では)。


感想文。

 野宿者の物語っつっても切迫感はほとんど無い。食糧確保に失敗しないので飢餓で歩けなくなることもないし、襲撃も起きない。行政代執行も放火も発生しない。せいぜい板尾が突然死するくらいだが、その遺体処理も何とな〜く解決される。野宿者に関する政治的な意図は、果てしなく脱色/脱臭されている。天国の青木雄二先生(原作。『ナニ金』の作者)がご覧になったらなんとおっしゃることか嗚呼、とか一瞬思ったが、先生は唯物史観主義者なので天国には行かれません。安心安心。Ashes to Ashes。
 閑話休題。つまり、何より着ているものが全く臭くなさそうだ、という一点が、この映画の主題が野宿者にないことを表象している。これは「逃げ出した人」の物語で、それを簡単に象徴できるのが野宿者だった、というわけだ。
「逃げ出した」ピーターは東京を歩いて周りながら、過去の人々と出会い、別れ、不完全に残っていたいくつかの関係を完全にぶった切り尽くし、完全な逃走を図る。取り残された矢部は少しだけ「世間」との関係性を取り戻そうという意志を見せる、ところで物語は終わる。つまり「逃げても何とかなるで」っつー。


 ところで、この映画にはもうひとつの、というかこちらがメインの主題がある。押井の用語を使えばピーターと矢部は「ドラマ」で、こちらが「物語」だ。「ドラマ」は物語を動かすエンジンで、必要悪(いわゆる『ダンナ……そろそろ仕事に戻らないか?』)。作者の真の意図たる「物語」は背景美術と無駄話にこそ現れる、という例の理論だ。つまり文字通りの背景となる「東京」が、この映画の真の主人である。あるいは「東京の空」が。カメラが江東区、上野、新宿、芝、月島、銀座、ときれいに東京を1周すること、そしてホームレス特有の「地上50センチからの視界」を印象的に用いていることを指摘しておけば足りるだろうか。



 とか評論風のナニかを書いてみましたが、年間50本も映画を観ない自分が、こんなことを語る資格は無いわけで(そうそう。知ってました? 映画を語るには資格が必要なんですよ。年間200本の映画を観た「シネフィル」だけが映画を語り得る、という無茶な規範があるんです。どう見ても新規参入障壁で既得権益保護政策なんですが、ぼくはわりとそれの信奉者なんです)、ただ、この感想だけは言いたい、ってのがあって、つまり


「ピーターこと池畑慎之介サイコー!!!!!」。


 あの美しいピーターがドロボーヒゲ生やして、白髪ボサボサで、ボロのリュック背負った「チンバの乞食」を演っている、というだけで一見の価値アリです。あと、青ビニ村のアクの強い面々もオモロすぎ。全然物語には噛んでこないうえに、話としては中途半端に完結してまってるけど、各々の演技だけで面白すぎる。だってオカマで腕っ節が強くてホームレスで男気とボランティア精神あふれるキムキム兄やんですよ? これは観ないわけには! あと、矢部は「透明な傍観者」というキャストを生まれながらに帯びていたかのようなハマり役。透明すぎて目立つ、という矛盾/ギャグ。俳優として希有なキャラクターだと思った。


 ダラ書き、結論無しで放り出してみる。
 あなたがどう見ようがあなたの勝手だよ。っと。