その名を読めばいい

最近読んだものを思いついた順で。

小田扉団地ともお

あらすじ:団地(集合住宅)に住む小学生のともお(かなりのバカ)が日々なんかします。お父さんは単身赴任中で、おかんはものすごいおかん顔です。姉もいます。ほかにも馬鹿な同級生とか変な隣のクラスのヤツとか変な高校生とか変な爺とか変な人たちばっかです。基本的に悪意を持った人はいません。

感想:ものすごい勢いでまったり。この作品は黒田硫黄の「茄子」みたいなもんだ。作者の得意とする「お馬鹿な人たち」は良く描けている、と言うかそれしか居ないし、「そこはかとなく切ない感じ」も出てる。あと、同じような昭和少年時代懐古コンセプトの『昭和60'sチルドレン』(だっけ?モーニングの)とは違い、きちんとファンタジーを入れている点も好き。けど、手癖感は否めない。こさめちゃんも和田家もマル秘警察24時も、全て死と暴力があった。それは日常とは死と暴力すらも含むものだと認め、その哀しみをさらなる日常(=バカ)で塗りつぶしていこうとする強い意志と、強い意志でも隠しきれない切なさが感じられたのだが。団地は見事にその辺を隠蔽している、というなんだか一昔前の郊外論みたいな手垢にまみれたどつぼにはまりかけているのでやーめた。つまり「ひかりのまち」は判る、けど古い、つまりよしもとよしともにはなれてない、ということ。

ひぐちアサおおきく振りかぶって

あらすじ:高校野球まんが。新設校で10人しか集まらず、けど元いじめられっこエースが頑張って、あとみんなで特訓して勝つ。

感想:なんか3巻のあたりで腐女子の皆様にウケてる、というのを知り、ふ〜〜〜ん、と思った。確かにそう見ると非常にコマは揃っている。が。その辺の話には全く触れずに感想イッチャウゾバカヤロー(小島)。作者は高校野球が判っている、もしくは非常に優秀なブレーンがいる、と全くの門外漢にも判らせるリアルっぽさ、非常に理想化されてはいるが、有り得なくはない、と思わせるリアルっぽさがこの作品のウリ。合宿では食事を利用して脳内ホルモンの分泌を活性化させたり(食事前=練習前、食事中=練習中=試合中、食事後=練習後で脳に快楽を覚え込ます)、体幹が云々、と言ってみたり。一抹のトンデモ臭さを含ませているところが、ますますリアル。つまりこれは、頭の良いスポーツマンガだ。そういえばこの「リアルで頭の良いスポーツマンガ」という流れは同じくアフタヌーンの『我らの流儀』から来ているのでは? とふと思った。
閑話休題ひぐちアサといえば、心の柔らかいところにマキロンを吹き付けるような、いやらしい人物描写で定評がある(どんな定評や)。このマンガの場合、主人公のエースがその「いやらしい人物」なのだが、ここのところどうも丸くなってきていて、実に面白くない。パートナーに認められ(1巻)、仲間に認められ(2巻)、かつてのいじめっ子に認められ(3巻)、勝利し、おいおい。次巻以降は苦い敗北でどのように人間関係を崩していくのか、そしてその傷をどのように再生させるのかが見所になるだろう(憶測)。

ECD『失点イン・ザ・パーク』

あらすじ:39歳無職(元アル中、元伝説のラッパー)が、彼女に振られ、ハローワークで職を探し、東京で日々を暮らす小説。つまりECD私小説

感想:東京をテーマにした本を立て続け(っても1カ月くらい空いてるが)に読む。前に読んだのは古川日出男サウンドトラック』。何というか、こっちの方が滅入る。『サウンドトラック』は東京という複雑な水路に、破壊という希望をひたすら詰め込んだ作品だった。こっちは要するに「仕事しなきゃ餓死する」「35歳制限はキツイ」とひたすら言っている小説なのだ。東京はただの風景だ。それはとてもリアルで、問答無用で、滅入る。『NHKへようこそ!』が全然ぬるく見えるくらいに。イヤホント。

菊地成孔サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍』

あらすじ:っていうかDCPRGスパンクハッピーのフロントマンにして東大講師の変態ジャズマンライターが格闘技評論。ワケワカラン。というかそれが商売として成立するのだから恐ろしい。帯のアオリに「僕は生まれてから5年間だけ格闘技を見なかった」とあるように、数年前に神経症を患ってから何故か格闘技を見るのを止めてしまった格闘技マニアが、2004年末から(編集の要請により)また見始めた、その観戦記。だからこの題。多分。

感想:ムラはある。けど、この1冊を3カ月強で書いたのなら、それもやむなし。独特の美文調、というか衒学調、つまり頭の良さを隠しもしない文体は好みが分かれるところだが、もちろん俺は大好物。とくに相撲=ムエタイ(俗=聖、ルンピニー=国技館、失踪したスパンクの華僑Vo=相撲マニアのかわいこちゃんライター、血腥さ=可愛さ)を対称させた章が良い。非常に図式的で陳腐な手法だが、美しいとさえ思った。そこに愛があるから。ですかね?

小川一水『疾走! 千マイル急行』

あらすじ:とある国が超豪華列車を持ってて、それに少年3人と少女1人が乗る。実はその国はもうすぐ他国に攻め落とされるので、超豪華列車に装甲列車をつけて、手みやげ片手に大国に助けを求めに行く計画。少年少女は何も知らされず国の希望として送り出される。追っ手も装甲列車を出してくる。各国を回り文化と歴史の差異を見ながら少年少女は成長していく。

感想:いつもの“S.F.はたらくひとたち”もしくは“S.F.プロジェクトエックス”。このアベレージはスゴイ。ていうか、S.F.じゃぁないな。架空世界モノ? 大戦間〜大戦期くらいをイメージしてるようです。まだ上巻のみ。

北野勇作『どーなつ』

あらすじ:脳味噌をアメフラシに移植して増殖さして、アメフラシが人に移植されて、あと人口知熊に乗り込んで工場作業したり踊ったり酒飲んだり人口知熊に人格が宿ったり。あと落語も見る。どっかで戦争が起こったらしい。SF。

感想:文庫の解説立ち読みすれ。つまり「何か大事なモノ」は常に/既に失われているので、僕達は悲しむことすらできない、というお話。

新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』

ホントにそのうち書きます。書きたいことが多すぎる。


追記@31日:参照無し、推敲無し、プラン無しで書いたらさすがにひどかった。目に付いた誤りを修正。DCPRGとかおおきく振りかぶってとか