「シャッフル」81年/監督:石井聰亙

これはスゴい! スゴいスゴいと聞いてはいたが、こんなにスゴイとは!

あらすじ

どこ探しても載ってない。のででっち上げ。

何か罪を犯して潜伏している少年(中島陽典)が部屋を出ようとしたところ、張り込みの刑事(森達也)に見つかる。走って逃げる。

そんだけ。

ならどうする。どぉすんだよぉ金ちゃんよぉっ!!!

えーと、まず最初に観て思ったのが「スカジャンの少年のしゃべり方が鉄雄そっくりだなぁ」と。「うるっっせぇんだよ!」って半泣きで言うところとか。とか言ってたら、コレ大友克洋原作なのね。「RUN」(『SOS大東京探検隊』所収)って、『SOS〜』は持ってるから読んでいるハズなんだが……よく覚えてない。


まーいーや。コレもスジなんて有って無いようなもんだし。ひたすら少年と刑事の追っかけっこ。一応、何で少年が犯罪に走る羽目になったのか、その犯罪とはなんだったのか、は途中フラッシュバックで補足されるけど。


まず、(もちろん)走る画が素晴らしい! アオリで、俯瞰から、パンで、車載で、手持ちで、あらゆる技術を駆使して何パターンもの「走るシーン」が積み重ねられていく。とくに素晴らしい(むしろ「どうやって撮ってんだ!?」)のが、自転車置き場での追跡シーン。幅1mもないであろう、自転車と自転車の間をひたすら走り抜ける役者を、カメラが追う。カメラは腰下。つまり自転車の壁の間をカメラが前方にぶっ飛んでいく映像なのだが、コレが実にハイパー。マトリックスの武器庫シーン、と言えばイメージできるだろうか。アレを凌駕するハイパー感。
「映画のすべては走るシーンにある」といったのは誰だったか。その基本におそろしく忠実。わかりやすい例を出せば、「ラン・ローラ・ラン」を20分に凝縮したような(もちろん、こっちのが17年も先だ!)。

ランナーズハイ

もひとつ。個人的にこっちのがポイント高いのだが、「ランナーズ・ハイ」を忠実に(過剰に)再現した映像の中毒性にヤられる。ちょっと長距離を本気で走ったことのある人ならわかると思うけど、初めてのランナーズハイは衝撃的な体験。あの感覚が、フィルム処理と音響で見事に定着されている。
中盤、ダレ始めたところから主人公が「ランナーズハイの世界」に入る。画はどんどん粒子が粗く、オーバー気味になり、音はダブ風に高音と低音が強調され残響音が発生し始める。最終的に最も大きく聞こえるのは自分の息づかいだ。次に幻影が見え始める。併走する幻影だ。ブルマの女子高生、男子高生、よくわかんないチンピラ、ボクサー、新聞配達、その他もろもろ30人ほど。死にそうな(でもなぜか足は動き続ける)主人公の周りで殴り合い狂騒する人々。
そして、ランナーズ・ハイが解けた瞬間の身を裂くような苦しみ!
ある意味「シャッフル」は極上のトリップムービーでもある。

そのほかいろいろ

この素晴らしい映画は、その機能の多くを音楽にも頼っている。で、あとで見返したらヒカシューだった。むべなるかな。純粋に現在のフロアで流しても通用するクオリティ。電気音楽に栄光在れ!
あと、もう言わなくてもわかってると思うけど、室井滋が出てる(笑)
そして。あらすじでネタバレしちゃってるけど、森達也が出てる! いや、森達也が若い頃役者をやってた、ってのは知ってたけど。そして石井聰亙作品に出てたことも知ってたけど。んで現在の森達也の顔も知ってるけど! あんな二枚目だったとは! っつーか背ぇ縮んだ!?(笑)
森達也の俳優活動についてはid:shimizu4310:20060112に詳しい。

81年の映画

この日観た映画の中で、もっとも「古さ」を感じなかった。ハナから、「81年の風俗を描く」とかそういう視点を放棄して、ひたすら理論的に映画を追い求めている作品だからか。純粋。

あとノイバウテンの映画観なきゃ。
「シャッフル」とか入った石井聰亙初期作品集BOXがそろそろ発売らしい(…のにトランスフォーマーのサイトにはほとんど情報が落ちてないのはどうなんでしょう)
http://www.transformer.co.jp/special/ishii.html
コレの第2弾にノイバウテンも入る予定とか。
http://www.ishiisogo.com/original_qanda.html
欲しくなってきたなぁ。